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 株式会社トミーウォーカーが運営するネットゲーム「SilverRain」のPC雪白ハクヤの日記帳。
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 【12】白い闇(前編)


朝方に近い時間に眠ったハクヤは、昼とも夕方とも付かない時間帯にようやく目を覚ました。
酷く落ち込んでいたとはいえ、居たたまれないやら、気恥ずかしいやらであまり布団から出たくない。
良将の蟲と応急処置のおかげで、腫れ上がっていた患部はひょこひょこと右足を庇う形にはなるが、壁に手をついたりすれば何とか歩けるまでに回復していた。
それでも巻かれた包帯を見れば負傷しているのは一目瞭然で、何も支えがないところを一人で歩くのは難しい。
昨晩言われたように良将に家まで送ってもらうことにし、布団の中で身じろぎながら、携帯で忍へ家にいるかどうか確認しようとメールを打った。
なるべく違和感が無いよう、気を配って文章を作り、何度か読み返して送信ボタンを押す。


―――返事はすぐに返ってきた。


慌てているのが分かる誤字だらけのメールを見て、申し訳なさよりも先に嬉しく思った自分が忌まわしい。




「ど、どうしたんだその足!」

「・・・GTでしくじっちまってさー」


良将に連れられて、玄関のインターホンを鳴らすと、すぐにドアが開く。
目の前に現れた忍は心配そうに綺麗な顔を歪めて気遣ってくれたが、ただ、それが申し訳なくて眉を下げて笑って答えた。


「無理したら駄目じゃないか・・・っ、あ、良将先輩!」


ハクヤを支えていた良将に気づいた忍が、有り難うとお礼を言うのをぼんやりと眺める。


「全然良いよ!もう、ゆっきー、無茶ばっかりするからさァ!」

「うっせ」


思わず悪態を付いたハクヤだったが、そこでふと良将が詳しいことを言わなかった事に気づく。
忍に詳しいことを知られたくないと今日布団の中でぼやいていたのを聞いてくれたのかもしれないし、気を使ってくれたのかもしれないが、何にせよ有り難かった。
手を振りながら遠くなっていく良将に視線を向けてこちらもヒラヒラと手を振り、忍にあまり体重をかけないようにしながら肩を借りて玄関をあがる。
今回だけはと思っていたのに、と内心自分に向けて嘆息した。

忍は心配してくれて、かける言葉を探しているのかもしれないが、お互いいつもより口数が少なくなっていたのがハクヤには酷く気になる。
いつも通り自分から話しかければいいのに、安定しない思考は後ろ向きに後退していくばかりで、何も思いつかなくて。
やはり、完全に治るまで、立ち直るまで、帰るんじゃなかった、と気分が沈みそうになるのを堪えた。


「吹き飛ばされたのか?」

「え、あー・・・まあ、そんなとこ。受け身取り損ねちまって」


忍に唐突に尋ねられて一瞬反応が遅れながらも、帰りにたまたま江間にあって、手当てしてもらった、と付け足して何とか答える。
曖昧な返事しかできない自分に嫌気がさしたが、細かいことは言えなかった。
ここまでに至った発端を、あの男のことを話題に出したくない。
あの男に引き取って貰った忍はきっと肩身が狭くなる。
あの男と自分の溝の深さを忍が知っているのかは分からないが、板挟みになって苦しませたくなかった。
加えて、迷惑になりたくない、嫌われたくない、と強迫観念に近い思いが、ハクヤの中では渦巻いて混ざり合って気分が悪い。

どろどろとした感情にとらわれているハクヤは気づけなかった。忍の表情が、ほんの一瞬翳ったことに。


「そ、うなのか?・・・そっか、本当に吃驚したんだぞ?」

「んー、悪ぃ」

「ううん、ほら、ソファーに座って?」

「・・・ん」


リビングまで肩を借り、ソファーに座らされてようやく話題に出来そうな内容を思い出し、数週間前に鬼を討伐しに行った依頼のことを話す。
忍に違和感を抱かせないようにと必死に笑ってつらつらと話し続けた。
時折相づちを打って労いながら聞いてくれる忍にふっと自然に表情が和らいだが、つい先日行われた狂鬼戦争をが脳裏に浮かんで、また表情が強張った。

依頼は仕方がないが、正直忍にあまり戦場に行って欲しくないと最近特に思う。
今忍に何かあったらと思うと、それだけで、目の前が真っ暗になりそうで。
戦いの最中、重傷で運ばれてきた忍の姿が今も脳裏から離れないのに。
ただ、それは能力者として無理だと分かっているし、自分よりも先に学園に来て戦っている忍の方が戦場慣れしていると言えばそれまでだ。
渦巻く感情は矛盾だらけで、どうにかなりそうだ、と忍が和室に向かったのを確認してから天井を仰ぎ固く目を瞑る。

忍が和室に向かってから暫く、リビングで寝た方が良いと布団を運んで来た音に気づいて視線を戻した。
よたよたしている忍を見かねて、自分で持つと言ったのだが、その足で持ったら駄目だと言われ、大人しくソファーに腰掛け見守る。
布団を敷いてくれている忍をじっと見つめた。


「・・・忍は和室でねんの?」

「うん?ううん、こっちで寝るけれど。一人で寝たい?」

「・・・、そんなワケねーじゃん」

「足以外にどこか具合の悪いところない?ご飯食べれる?」


忍の前では笑っているつもりなのだが、良将と似たようなことを言われ、困って笑った。
そんなに具合が悪そうに見えるのかと罰が悪い。


「変な時間に食っちまったから、軽いモンで良いぜ」


ただ、やはり食欲は全くと言っていいほど沸いてこず、尤もらしい理由を付けて誤魔化した。


「そうなのか?わかった」


頷いてエプロンを身につけキッチンへ向かう忍を見送り、座っていたソファーに横になった。
ハクヤは頑なに忍に心配をかけさせまいとしている。
どうして今回はこんなに臆病になっているのか、自分でも分からない。

あの男の言葉が意識の底に焼き付いているから、だけではない気がした。












―――いつも傍にいてくれるのが当たり前だった。だから、緩やかなそれでいて確実な感情の変質に気づけなかった。












家に帰ってきてから数日。

何日目かの深夜、ハクヤはふと目を覚ました。
夢見が悪かったわけでもないのに、今日はやけに目が冴えて眠れない。
しばらく布団の中で寝返りを打っていたが、やがて意識がはっきりしてくると、今度は右足のことが気になりだす。
起きあがり、立ち上がって、恐る恐る右足に体重をかけてみる。
―――実を言えば、昨日の時点で大分違和感なく歩けるようになっていたのだが、忍が無理は禁物だからと、二組の布団はまだリビングにしかれている状態だった。

もう、力が入らなくなったり、体勢を崩したりしない。
ほっと息をつきながら、再び確認するように足踏みしてみる。大丈夫そうだ。
これなら歩いたり走るのに支障は出ないだろうと我ながら回復の速さに目を見張る。
まあ、だからこそあの男の暴力を受ける回数が増えるのも事実だったが、苦々しく顔を歪めて考えるのを放棄した。

忍は隣で床についていて、布団からは静かな寝息が聞こえてくる。
自分の布団にゆっくり座り直したハクヤは、寝ている忍の髪をそっとかき上げて顔を覗いた。
忍は起きる気配もなく、静かに寝息を立てている。
艶やかな黒紫色の髪、透き通るような白い肌。幼い頃からずっと見てきた大事な幼なじみ。
今も昔も綺麗な容姿は変わらずで、ハクヤはいろいろと心配事が絶えない。

学園に来る前は実質忍しか気を許せる相手がいなかったハクヤは、意識していなくても忍に対する執着は高かった。
他に仲の良い友人が出来たら自分の事なんて忘れてしまうんじゃないかと、一番仲の良い友達を誰かに取られるのが怖いと、自分勝手で幼い我が儘は、あの男の度重なる暴力と、忍が学園に行ってしまった後周囲から与えられる奇異の視線に、自覚できないまま徐々に歪んで、壊れて、変質し。

ハクヤは与えられた環境よりも暖かい環境を知って、それでも尚、実家の仕打ちに耐えられるほど強くはなれなかった。
打たれ強くなるどころか、年を重ねるごとに臆病になり、脆弱になり、耐えられなくなり。
一人でいるには限界で、かといってあの場所では誰も自分を見てくれなくて。

あの男が納得しそうな口実を、誰も自分を見ていない屋敷の一室に閉じこもって考えて、様々な条件を呑んで、ようやく、今此処にいる。
必死だった。どうしてそんな必死になったのか分からなくなるほどに。


―――いや、目を背けているだけのなのかもしれない。








「―――、」


ただ無言で忍の顔をじっとみていた。
純粋に綺麗だと思う。外も中身も。異質だと言われ続けていた自分とは違う。
両親を失って、記憶を失って、辛いはずなのにいつも周りを気遣って。
それでいて忍は、穏やかな立ち振る舞いからは想像が付かないほどまっすぐで気丈だ。
すぐに不安定になる自分とは全く違う、だから、羨ましくて、隣にいて欲しくて、負担になると分かっていて一方的に安心させて貰って。
ああ―――、なんて勝手な。

じっと見ていただけだった。
忍の顔を見ると、自然と落ち着くので、落ち着いたら布団に潜って寝ようとそれだけを考えていたはずだった。


―――けれど今日は落ち着かない。それどころか。

突き動かされるよう、に。
額が、鼻先が、それから  が触れそうになる距離まで近づいて――――、


「―――っ!!!」


触れるか触れないかの距離で我に返った。
バッと顔を上げ、離れる。





―――何をしようとした。

―――今、何を。






驚愕で瞳を見開き、漠然と焦る。















―――あんなに目を背けていた「何か」に、今自分から飛び込んでしまった気がした。















「・・・ん」

「・・・っ!!!」


起きてしまった。
ゆっくりと忍が起きあがるのを、びくりと身体を強張らせ、ただ怯えた目でじっとみる。
起きあがった忍はこちらに気づいて、首を傾げて不思議そうに見て、


「? ・・・ハク」


手を伸ばして気遣ってくれようとしたのに、






パシッ―――と乾いた音がした。






「・・・あ、」


それはどっちの声だったのかわからない。
叩かれた手と叩いた手。
呆然と酷く悲しそうな顔をした忍を、同じように呆然と泣きそうな顔でハクヤが見つめる。





―――最悪だ。傷つけた。





勝手に手を伸ばして、伸ばし返してくれた手を拒絶して。
目の前が、頭の中がぐちゃぐちゃになる。





―――おかしい、今の自分はおかしい!




動揺し、狼狽した頭は上手く働かなかった。
目を背けていた「何か」に向き合う余裕もなかった。

自分の口から次の言葉は出せなくて、忍の口から次の言葉を待つことも出来なくて。
制止する声を振り切って、































飛び出した。


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2008⁄03⁄31 22:37 カテゴリー:SS
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プロフィール

雪白ハクヤ

Author:雪白ハクヤ
性別:男
職業:クルースニク×魔剣士
誕生日:11月8日


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