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 株式会社トミーウォーカーが運営するネットゲーム「SilverRain」のPC雪白ハクヤの日記帳。
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 【10】Twilight(前編)


先ほど飲んだ栄養ドリンクのおかげか幾分体力が回復している。
最近よくちょっかいをかけている1つ年下の赤白半纏を着た少年、今江雅鼠に貰った物だ。
紫刻館入り口ですれ違った雅鼠に、あちこち薄汚れていたからか心配された上に限りある栄養ドリンクまで貰ってしまった。
悪い気がするが、感謝の意を込めて別れ際に髪をぐしゃぐしゃーっと撫で、何とか笑って送り出した。

右足を動かすと、まだ熱を持っており重みが増しているような気がしたが考えないことにする。
ブーツとズボンで隠れた足首はどうなっているのか分からないが、そんなに酷くはないだろうと思う。

痛くはない。熱くて重いだけだ。歩ける。

もう随分遅い時間だ、と携帯を見れば午前一時を回っていた。
そろそろ休んだほうが良いだろうと思うのだが、最近寝泊まりするのに利用していた場所は生憎少し遠いし、こんな状態で家へ帰るつもりもない。
鏡を見なくとも分かるほど酷い顔をしているのに、帰ってしまえば忍に心配をかけてしまう。
いろんな面で心配をかけてしまっているが、せめて、せめて身内のことでだけは忍に負担をかけたくないのだ。
近場に休めそうな場所はないかと立ち止まるが倦怠感が緊張感を呑み込み思考がまとまらない。

―――だから、背後からガッと誰かに後ろから組み付かれるまでその気配に気づけなかった。


「―――っ!!!!!」



そこでようやく現実に引き戻され、体中から血の気がひき、心臓が激しく波打つ。
紫刻館内ほどではなかったがハクヤは酷く混乱した。

ここはGTではない。
実家でもない。
それにその他に当てはまるような輩ならばもっと華奢な相手を狙うだろう。

冷静に考えればなんてことないが、鈍った頭はなによりも先に自己防衛を優先した。
臆病な犬ほど、身を守るために相手に噛みつくものだ。
知り合いかもしれないという概念はそこにはなく、手加減も理性も一切ない。
九割の恐怖と一割の殺意、反射的に躊躇いなく後ろから飛びついた相手に蹴りと拳をいれる。


何処を蹴られればしばらく動けなくなるか身をもってよく知っていた。

何処を強打すれば息ができなくなるかもよく知っていた。



急所と呼ばれる部分だけを狙い、身を翻す。



―――だが、




「うっわ・・・っぶね!」


聞き慣れた声と見慣れた容姿が視界の端に映り、身体がびくりと硬直し、攻撃は当たらず、空を蹴り空を切る。
自分の軌道がでたらめだったのか向こうが避けてくれたのか定かではないが、その人物は結果的に当たらなくて良かった相手。

咄嗟に笑みを貼り付けることも忘れ、呆然と目の前の相手を見つめその人物の名前を口にする。


「・・・えま」


機会を見つけては共に騒いだり、からかったりからかわれたり。
勝手な思いこみでなければ、親しい部類に入る友人。
だからこそ正直なところあまり会いたくなかった人物だった。
良将は忍とはまた違った方面で無意識に甘えが出る、すぐにボロが出そうになる相手なので。


「おッ前、容赦ねェな…! まァ、夜道での防犯対策としちゃ合格だろーけど!」

「・・・、おう」


いつもと同じように明るく言う良将に、より罪悪感が募る。
本気で殴りかかられたのだから良い気分はしないだろう。
後悔が脳内を塗りつぶし、先ほどとは別の恐怖が脳裏を掠めた。
普段ならばここまで神経質にならないが、今は悪い方向に、他人が抱く感情の動きに敏感になっている。
まともに顔がみれず、悪ぃと言葉を続けて良将から視線をずらした。


「今日はバイト休み?」


―――ああ、そう言えばそう言うことになっていた。


「・・・休み。お前は今からGT行くんだろ?」

「そーだよ。ゆっきーも一緒に行く?」

「・・・俺は、今行ってきたからいかねーよ。アビ残ってねーし」


先ほどGTでパニックを起こし理性が飛んだことを嫌々思い出す。
相手がゴーストだったから良かった物の、それ以外だったらと思うと今更ながらゾッとした。
笑って誤魔化せば良かったのかもしれないが、力が抜けたように顔の筋肉を動かず徒労に終わる。良将の視線が気になって仕方がないが戻す勇気も全く沸かない。
結果的に良将の声だけが聞こえるが、声だけ聞くといつもと変わりないように思えた。


「あのさ、今から帰る?」

「・・・、どこに」

「何処って・・・、お前ん家だよ」


今、は帰るつもりはなかった。
明らかに調子が悪いのに、忍に心配をかけたくない。
だが、帰ると言えば、もし良将が忍に連絡した際余計ややこしいことになるだろう。
すぐにばれてしまう嘘は迷惑にしかならないと考えあぐねた結果、素直に返答することにした。


「今日、はここらへんに泊まっけど」

「何で?」

「・・・、頭ん中ぐちゃぐちゃなんだよ。いつ爆発するかわかんねーし」


ハクヤの表情は不機嫌、というより困惑の色が強い。
声色は酷く落ち着いていたが、力がこもっていないようとも取れるほど覇気がない。
淡々と言葉を返しながら早く良将がGTに行かないかと、相手の足下に視線を向ける。
蜜琉もだが、良将も酷く察しが良い。
もう既に自分の調子がおかしいことなど気づいているのだろう。
言外にGTへ行けと含んでいるのも、何となく感じ取ってくれたかもしれない。

だから、このまま良将が踵を返してGTへ向かうのを見送ろうかと思っていたのに。


「あのねェ、こんなトコ一人でふらついてたら誘拐されるよ」


良将は、背を向けなかった。
それどころかそのまま会話を続行させるつもりのようで。
ハクヤも突っぱねる気力も勇気もなく、そのまま返答を続ける。


「・・・、されねーよ」

「うんにゃ、ふわふわの可愛い子なんて一発なんだぜ!髪の色薄い緑目ってあっちじゃレア度高いんだぜ、知ってる?」


いろいろと口を挟みたい内容だったが、今日はそこまで気が回らない。
一瞬、無意識に髪を触って、それに気づいてすぐに手を下ろした。


「・・・野宿しなきゃ良いんだろ。そこら辺のカラオケにでも入って」

「ああ、はいはいおうち帰りたくねェのはわかったから。拾ったげる、オレんちおいでー」

「・・・あ?」


良将の言葉にハクヤは虚をつかれたように瞳を瞬かせる。
調子の良いときなら、喜んで遊びに行く申し出だ。
だが、今は。
今行けば、確実に不快な思いをさせるだろうと分かっているのに行く気にはなれなかった。
見知った相手に、勝手ながら親しいと思っている相手に、不快な思いはさせたくないし反応が怖い。

・・・今のハクヤは、自分でも呆れるほどに臆病になっている。


「GT行くんじゃなかったのかよ」

「ン、やっぱり今日GT行くのやめ」

「何だよそれ。・・・つーか、いい。引っ越しとかで忙しーだろ」


やんわりと拒絶する。右足が、重い。
はっきりと拒絶しない返答に甘えと迷いが無意識に混じっているのに気づいて自分で自分に呆れた。


「ヘーキ、荷物なんて元々ほとんどねーし」

「・・・何言うかわかんねーし、何するかわかんねーからいいって」

「あー大丈夫大丈夫、何しようが絶対大丈夫な自信ある、それに関しては」

「・・・、はぁ?いやそれどーなんだよ」

「てなわけで、ウチおいで」

「・・・、いい。いきなり癇癪起こされたら気分悪ぃだろ」


自分でも何が地雷なのか分からないような状態なのだ。
本当に何処でスイッチが入り何を言い出して八つ当たりするか分からない。
それだけは避けたい。調子が戻ったらまた遊び行くぜ、と気怠げに答え重い右足を引きずる。
良将の返答を待たずに、その場を離れようと背を向けた、が。


―――即座に後ろから手首を掴まれた。



「・・・!」


流石に2度目は相手も分かっていたから固まるだけで終わったが、困惑したように振り向くと良将がそのまま手を引いて歩き出そうとしている。

足が、重たくて、熱い。

いや、それよりも。


「・・・な、離っ」

「だー、もうごちゃごちゃ言ってねェで来なって!!」


ハクヤが抗議しようと口を開けば、良将に呆気なく遮られてしまう。


「変なとこで寝泊まりするんだったらオレが連れて帰るからねェ!」


反論しようと再び口を開けたが、なんと言って反論すればいいのか分からなかった。
困惑しそのまま手を引かれ歩く。


―――急、に、張りつめていた何かが緩み、右足の熱と、重み、が極端に増した。


右足を地面に付ける度かくんと膝から下の力が抜けるようだ。
酷く遠くを見ているように、凄く近くを見ているように、視界が、ぶれる。

・・・とうとう、ぐらりと大きくバランスを崩してそのままつまずきそうになった。
それに気づいた良将が慌てて肩を支える。


「え、うわ!?ちょっと、どうしたのさ雪白!」


―――右足、が『重い』


「・・・が、」

「ン、何?」

「足、がちょっと重てーだけ」


何気なく言うハクヤの言葉に、良将が怪訝そうに眉をひそめたのが映る。


「・・・ちょっと足見せて」


頑なに拒む理由も見つからず、ブーツを脱ぎズボンの裾を自分で上げた。

見れば、

普段とは比べほどにならないほど足首が腫れ上がり、流石に自分でも目を見張るほどで。
こんなに腫れているとは思っていなかった。


「・・・何でもっと早く言わねーの」


良将の静かな言動が酷く気になる。


「見た目ほど酷くねーんだよ」


鈍った頭で反射的にそう答えて。


「そんなわけねェでしょ」


即座に否定された。

良将が手を翳して光の蟲を出そうとして止め、辺りを見回す。
山の麓とはいえど此処は一般人も通る場所だ、使うわけにも行かないのだろう。

パッとこちらを見た良将と視線が合った。相手の真剣な表情に何故か息をのみ、ハクヤは瞳を眇める。
そして、間違った方向へ錯覚する。
右足の神経が悲鳴を上げ、視界と思考が鈍り怯えに拍車がかかる。



―――暖かな心配と理不尽な怒りの区別さえ付かない。



「・・・、何で、怒ってんの?」

「? いや、怒ってねェよ。心配してんの!」

「・・・、俺はまだ、何も、別に」

「・・・雪白?」




―――気に障るようなことをしたのか

―――不快な発言をしただろうか





「何か、・・・っ!?」


くしゃっと勢いよく頭の両側の髪が波打った。
目の前にいる良将の両手だときづくと同時に、そのままぐしゃぐしゃと髪をもみくちゃにされてようやく我に返る。


「怒ってねェって」


宥めるような声色にただ酷く困惑するしかできず。
ともかくその足のこともあるし、何言われようがこのまま連れて帰るよ!と言う良将にぐしゃぐしゃされながら、複雑な表情を浮かべたままハクヤはそのまま立ちつくした。

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2008⁄03⁄16 15:36 カテゴリー:SS
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プロフィール

雪白ハクヤ

Author:雪白ハクヤ
性別:男
職業:クルースニク×魔剣士
誕生日:11月8日


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