株式会社トミーウォーカーが運営するネットゲーム「SilverRain」のPC雪白ハクヤの日記帳。
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 【9】重ねては目を背け


ホテルであの男と接触してから数日、毎日のように気怠げな足取りで向かうのは駅だ。

兵庫県、神戸市のゴーストタウン「紫刻館」。
鎌倉からは四時間前後かかる遠方だったが、その方が都合が良い。
雨風がしのげて、それでいて遠い。見知った相手に遭遇する確率が減るだろうと判断を下した結果だった。

誰かとGTを回るのは好きだ。
けれど、今は外面的にも、内面的にも調子が悪い。
こちらに来てようやく増えた繋がりが自分の勘違いじゃなければいいと怯えているような状態。
薄汚い感情ばかりがぐちゃぐちゃに交じっているような。
誰かに会いたい、誰にも会いたくないと矛盾した願望は浮かんできては消えていく。
結局どうしたいのか分からないまま、もともと気持ちの整理を上手くできる方ではなかったので考えることを放棄した。

目的の神戸駅へ電車が到着したのは23時半。
深い漆黒の世界の中、歴史を感じさせる貿易港の北部に連なる山中に一軒の洋館の廃墟がみえてくる。
上着から取り出したカードを手に取ると、呻くように呟いた。





「―――イグニッション」


青い武装ジャケットを纏った姿に変わり、現れた青白いハンマーを握り直すと、両開きの無駄に豪勢な扉に触れる。
館内へ踏み入れた瞬間、まるで待ちかねていたかのように数体影が現れた。
死人の独特の匂い。
死しても尚動く子供、サケビが凶暴さを押し隠して悲しみの声を漏らし近づいてくる。
小さな身体にはそぐわない大音量の絶叫が能力者に忌み嫌われている存在。

能力者に忌み嫌われる地縛霊の子供―――身内に忌み嫌われた真っ白な子供。



―――あっちじゃ似たようなもんなんだろーな。



・・・無意識に浮かんだ自虐的思考に瞳を眇める。
やはり、誰にも会わない方が良い、と深く息を吐いて、ぎょろりと動いた複数の血走った瞳を無言で見据えた。
小回りがきくよう調整し、スピード重視に改良されたハンマーを構え直し、風を身に纏う。
重量感を二の次にしたのは、一度殴りつけた後すぐさまもう一撃叩き込むためだ。
あまり重すぎると自分ではバランスが取れない、駆けながらなぎ倒すにはこれぐらいが丁度良い。

タンッとブーツで地を蹴り、絶叫をあげてこちらの精神を苛もうとした一体を頭上から叩き潰す。
不快な叫び声に眉をひそめながら、続けざまに殴りつけて、潰して、影から生まれる漆黒の手で引き裂いた。
一体、もう一体と淡々と片付ける。

疲労で身体が動かなくなったら近場で仮眠を取って、再び屋敷の中を駆けていく。
この数日間は、その繰り返しだ。
疲労は蓄積していくばかりで身体はだるい。
それでも、意識は沈むことなく神経は研ぎ澄まされていた。
早く、早く元に戻らなければ。とハクヤは焦る。

先日、偶然鉢合わせた坤と米沢に出向いた際、辛気くさい顔をするなと頭を撫でられてしまったのを思い出した。
いつも通り笑っていたつもりだったのだが、やはりカフェのメンバーといると気が抜けてしまうらしい。
実家のほとんどの人間に髪に触れることさえ嫌がられていたハクヤにとっては、撫でられるという行為は慣れていなくて戸惑う。
嬉しい、がどうしたらいいのか分からなくなる。
けれど、これ以上表情を崩すわけにも行かず、誤魔化すように笑って礼を述べて別れた。

2週間あれば、ゴースト相手にハンマーを振り回せば、あの男の悪意も嫌悪も風化して、自分の状態も元に戻るだろうと思っていたが今回は随分と尾を引いている。


「・・・、まだ」


もっと潰せば。
突き動かされるように奥へ進むと、床に擦った後を見つけた。
隠し部屋。いったい何に使われていたのか、この屋敷は隠し部屋が非常に多い。
引きずった後がある棚をずらして中を覗けば、埃被った子供サイズのベッドが1つ。
ふと、既視感が一瞬脳裏を掠めたが、それが何なのかはっきりと自覚する前に複数の殺気に掻き消された。


背後から4体。


鋭い刃を耳に持つ白ウサギ、回復能力を持つ蛙、包帯をまきつけたリビングデッド、仮面とナイトドレスを纏ったリリス。
面倒な組み合わせに舌打ちしながら向き直り、即座に最も近くにいた小柄な兎を無言で殴り飛ばす。
上手く入った一撃は、そのまま兎を消し去った。
狭い部屋、叩きつけられる白い異形。



―――途端、先ほど湧き出た既視感がハクヤの脳裏に色濃く蘇る。



豪勢な洋館、広大な和館。
敵意を向けられ、奇異の目で見られる。
冷えきった空気。
今まで意識していなかったのに。
ここは、まるで。


急に、実家の家とここが、何もかもが似ているような錯覚に襲われて、集中力が途切れた。

注意力が散漫になっていたと気づいたときには遅く。
迫る気配、自分の身体が宙に浮き壁に叩きつけられる音。
あの男に吹き飛ばされたことを彷彿させられるかのような、一撃。
派手な音を立てて小部屋の壁に受け身も取れずに激突する。
ぐきり、と鈍い音を立てて自分の右足首が嫌な音を立てて曲がったのが分かった。


「―――っ!!!」


走る激痛に息が詰まり、咄嗟に体勢を立て直すのを忘れたハクヤの眼前にもう一体仮面を被ったリリスが迫る。
空洞のような仮面の奥から黒い視線が青緑色の瞳を射抜き、撹乱攻撃だと察した瞬間視界がぐちゃぐちゃに掻き乱れた。

言葉が出ないほどの異常な焦りと、異常な恐怖が思考を塗り潰していく。

ハクヤを囲む異形は、機会を逃さず爪で切り裂こうと、包帯だらけの手で殴りつけようと、巨体で押しつぶそうと、一斉に飛びかかってきた。

ハクヤの撹乱した思考が、それらを別の物に置き換える。
殺意とともに対象を屠る動く死人、理不尽な暴力を振るうあの男が重なり現実と虚構の区別が曖昧になっていく。
足首に走る痛みで焦点が合わない瞳は、くすんだ黒髪と薄茶色の瞳の男を捉えた。

常に絶対的に暴力を振るい、蔑んだ視線で見下ろしてくる、あの、男、が、




蹴られる。今度は殺される。





何かが、弾けた。
立ち上がり、「両足」で踏みとどまり、青白い鉄槌を振り上げた。



(やめろやめろやめろやめろやめろよ。よんな!!よんな!よんな!!入ってくんな、今は入ってくんな!!!!!)



叫んでいたのか呟いていたのかそれとも声にならなかったのか、ハクヤはあの男を追い払おうと半狂乱になって鉄槌を振り回す。
振り回しても振り回しても、男の影は陽炎のように揺れるだけで。
その様子にさらに恐慌をきたしたハクヤは銃弾の雨を降らし、再び鉄槌を振り下ろした。


手応えはあるのに、あの男の影が消えない。
ああ、まだ足りないのか。まだねじ伏せられるのか。


手応えは確かにそこにあり、辺りにいたゴーストは消滅し、死体が残るリビングデッドももう動かなくなった。
だが、恐慌状態に陥った思考が元に戻るのには時間がかかり。

静寂の中、何処までも濁った嫌な音が―――砕けて、拉げて、潰れる音が―――辺りに響いても尚振り上げた鉄槌は止まらない。

荒い呼吸を繰り返し、ようやく我に返れば、あの男の影など何処にもなく。
眼下には、動く死体から動かない変わり果てた肉塊が、原形を留めることなく異臭と共に床にこびりついていた。
青い武装ジャケットも、青白いハンマーも黒ずんだ赤が混じっている。



「・・・、潰しすぎちまった。まあ・・・、別に、良いか」


もう少し奥へ行こう。此処は気持ちが悪い。
ふと、右足首を嫌な方向にねじ曲げてしまったのを思い出した。
我に返った後両足でハクヤは立っている。
右に重心をずらしてみたが、痛みはない。
違いがあるとすれば少し重たくて熱いぐらいだろうか。
ああ、思ったより酷くねーじゃん、と薄く笑いそのままふらりと歩き出した。





















死者の巣窟であるこの館に、物言わぬ肉塊に、臆病な自分に、
目に入る物全てに怯えて目を背けた。
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2008⁄03⁄11 16:01 カテゴリー:SS
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Author:雪白ハクヤ
性別:男
職業:クルースニク×魔剣士
誕生日:11月8日


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