株式会社トミーウォーカーが運営するネットゲーム「SilverRain」のPC雪白ハクヤの日記帳。
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 【8】Vanity


しばらく家に帰れないからと忍に告げて数日。
鬼依頼を終え、重傷を負った仲間を気遣い、共に戦った仲間と解散し、鎌倉へ帰還する途中ハクヤは指定されたとあるロイヤルホテルにいた。

わざわざ状況を聞くためだけにホテルで接触を求めるあの男の態度にうんざりする。
今忍とハクヤが正しくは忍にあの男が貸し与えている家に訪れず、また実家まで呼び出さないのは、勿論ハクヤのためではない。
同居している忍が訝しく思わないためであろう。
ハクヤが忍と同居することにあの男は酷く都合悪そうに表情を歪めていたのを思い出す。
最終的に許可をだしたのも、1つは忍の口添えがあったからだ。
・・・1つは。

本当に外面だけはいい、とハクヤは胸の内で悪態を付きながら、最上階で動作を止めたエレベーターから下り部屋の前で番号を確かめる。ここだ。
・・・依頼を終えた後休む間もなく赴いたせいで、ハクヤの身体からまだ疲労は抜けてない。
ノックをしようと気怠く腕を上げたが、見計らったかのようにドアが開いた。



あの男が自分で開けるわけがない、おおよそどういう立場の人間が扉を開けたのか分かった。
見慣れぬ女性が視界に入る。
有力者の側でスケジュール管理、催事の打ち合わせを行う人物、俗に言う秘書に当たる相手だろう。
以前男の側にいた女性とは別の女性だと気づいて、自動的に不快感を感じ即座に思考を鈍らせた。

下手に勘ぐってうんざりするのは自分の方だ。

女性は自分の容姿に一瞬瞳を見開き、何事もなかったかのように表情を戻す。
実家では見慣れた反応だったので、今更何も思わなかった。


「・・・ご子息の方ですか?」

「・・・、まあ、そうなるけど」

「では、こちらに」


事務的な態度に事務的に答える。
数日間此処で過ごして、再び遠方の実家へと帰るつもりなのだろう。
室内へ入ればそこは実家の屋敷とは違ってはいたが、あの男の私室と同等の広さはある豪勢な部屋だった。
実家の屋敷とホテルの一室、和室と洋室、これほどまでに雰囲気は違うというのに、ハクヤは何処か息苦しさを感じる。
・・・この男がいるからだ。


「来たか。・・・君は外に出ておいてくれないか?」

「わかりました。それではご用がありましたら、ドアの前にいますので」


男はハクヤを一瞥すると、女性を外に出し、男は状況を報告しろと促してきた。
必要ないだろ、とハクヤは思ったが、つい先日行ってきた鬼依頼の報告書を差し出す。
男は無言で受けとると、ほんの数分目を通した後それを無造作に投げ捨てた。

ハクヤや忍が参加した依頼は、逐一この男に報告が行くようになっている。
結局自分も忍もこの男の監視下というわけだ。
逃げ出すには幼く、世間を知らない自分。

・・・吐き気がする。



「忍君は元気か」

「・・・元気だけど」

「ふん、そうか。お前がいなければ、忍君も負担も減るだろうに」


歯に衣着せぬ悪意を相変わらずぶつけられる。
無言でそれを受け止めて、極力感情を殺した。
侮蔑の視線を向けたまま、男は学園に関する資料を手に取り言葉を続けた。
それはハクヤが送った物も混じっていたが、大部分が見覚えのない資料であることに気づく。
どうせ手を回して手に入れたのだろうと自己完結した。
見ているのはどうやら来訪者に関する資料のようで、男は眉をひそめてぼやく。


「異形の物を学園側に引き込んでいるとか言っていたな。まったく、危険因子を自ら取り込もうとするとは分からんな」


他者を認められない姿勢は自分を貫いて、向こう側にまで向けられている。
新しい能力を受け入れられない。少しでも異質な部分を見つけては、異常だと騒ぎ立てる。
安全な場所から批判しかしないこの男に、ハクヤは苛立ちを抑えきれず理性が押しとどめるよりも先に渦巻いた本音が漏れてしまった。


「・・・アンタは他の能力者が怖いだけじゃん」







―――途端、辺りの温度が急激に下がった。






あれほど刺激しないようにと心がけていたのに今の一言で台無しにしたことに気づく。
態度を改めるのがもう遅いのも。
反射的にイグニッションカードを取り出し青い武装ジャケットを身に纏った。

・・・同時に、胸から腹にかけて体内の水分が爆発を起こしたような衝撃と共に視界に火花がちる。

呼吸が上手く出来ず断続的に胸を上下させながら、後ろに吹き飛ばされたのだと理解するよりも先に、髪を、男がもっとも毛嫌いしている場所を掴まれ床にもう一度叩きつけられた。
直接頭が床にぶつからないように両腕で庇えば、脇腹に重い蹴りが入りさらに息が出来なくなる。
起きあがれば再び引き倒され頭を叩きつけられるだろうと、身体を丸めてひたすら耐えた。

ハクヤが成長するにつれて、幼子の時よりも丈夫になるにつれて、この男はより激しくハクヤに暴力をふるうようになった。
他の能力、ゾンビハンターとしての能力が発覚し学園に通うことになってからは、さらに容赦なくアビリティまで使用するようになった。
イグニッションにより、打たれ強くなるのを見越して。
これが、学園に通うことを許可したもう一つの理由。

それから、別の能力を持ったことに対する失望と侮蔑を込めるように。
有力な水練忍者の家から違う能力者が生まれたのが酷く気に食わなかったらしい。

男としても都合が良かったのだろう。
なぜなら、実家で離れに追いやって隠れるように暴力を振るわずとも、すべてゴーストという非日常の世界に属する敵のせいにできるから。

皮膚の色が青紫色に変色しようが、腕や足が腫れ上がっていようが。


「いつ私が口答えを許した。・・・思い上がるな、忌み子が」


何度も何度も蹴りつけても飽き足らないのか、男はハクヤの胸ぐらを掴むと乱暴に引き起こす。
まともに互いの目があった。
間近に目を合わせたのは何年ぶりだったかと、痛みで麻痺した頭で他人事のように考える。

くすんだ黒髪、薄茶色の瞳。
真っ白な白髪、青緑色の瞳。

互いに親子であることなどとうの昔に意識から排除したが、それが必要ないほどに似通う物は1つもない。
容姿の作りもハクヤはこの男、戸籍上は父親であるこの男と全く似ていなかった。
母親寄りの容姿だと知ったのは、学園に来る直前見つけた一枚の写真。
ホコリ被った写真にこの男と写っていた若い女性の容姿は、自分と酷似していた。
残念ながら髪の色と瞳の色は違ったが、それを差し引いてもよく似ている物だと思った物だ。
この男は暴力をふるう際自分の顔を意図的に避けている。
少なくとも、母親に当たる女性は大事にしていたのかもしれない。

母親の名前は何だったっけ。とぼんやり思う。
視線は男と合っていても意識は別の所に飛んでいた。
痛みに怯えているのか、男の傲慢さに嫌悪しているのか、自分の情けなさに辟易しているのか。
混ざり合って溶けてしまってよく分からない。

何も言わないハクヤに、男はさらに激昂した。



「お前さえいなければ   も死なずに済んだ物を・・・!!!!」

「・・・・・っ」


息が、詰まった。
まるで抜き取られてしまったかのように、男の言葉が途中聞き取れない。
いや、無意識に聞くことを拒んだのだと気づく。
音としては認識したが、言葉として理解したくなかった。

それは・・・、先ほど思い出そうとしていた、母親の名前だったから。

低く這うような声で男がぶつけてきた言葉は初めて聞いた事実で、今までぶつけられてきた言葉や暴力以上にハクヤに衝撃を与えた。
とらえようによってはどうとでも取れたのかもしれないが、今ハクヤの思考は自虐的に悪い方向にしか働かず。


・・・正直、微かに、微かに期待していたのだ。
もしかしたら、母親ぐらいはほんの少しでも愛情を持って接してくれたのではないか、なんて。


だが、物心付く前の思い出にさえすがることも許されず、すべて今の男の言葉で期待は砕かれた。


ああ、そうか、やっぱりそうなのか。
母親も自分を疎ましく思っていたのかと。


「お前さえいなければ、お前さえ産まなければ」


よほどハクヤの今回の態度が気に食わなかったのか、いつにも増して暴言と暴力を振るう。
呪詛のように繰り返しハクヤの傷を抉るように男は呟いて、目を見開いたまま固まっているハクヤを放り出した。


「・・・出て行け」


呼び出したの本人が、まるでここにいることを責めるような眼差しでハクヤを睥睨する。
理不尽な応対は今に始まったことではない。
それに、痛みと先ほどの言葉で衝撃を受けたハクヤも反論する気力はなく、よろよろと立ち上がると部屋を出て行った。
反論らしい反論も出来ず、援助して貰っている手前、忍もそれに関係している手前、反撃することも出来ず。


―――実家にいたときと何も変わらない。


ホテルを出て人目を避けるように路地裏へ逃げた。
サックにいれていた帽子を取り出して深く被る。
髪を、隠すように。

憎いのか悲しいのかわからない。
凍ったように思考が動かず、ただ言えるのは。


「・・・疲れた」


そう、酷く、疲れた。


「旋剣、は、直接治癒になんねー、よな」


力が抜けたように座り込んで、熱を持って痛みを訴える場所を刺激しないよう身体を丸める。
涙よりも先に乾いた笑いが漏れた。


「・・・、ははっ、ばっかみてー」


・・・どっちが?

・・・どちらも。



緩やかに嘲笑を向ける。
酷く傲慢で臆病なあの男に。
そして淡い期待を抱いた愚かで臆病な自分に。
ふと、視界がぐにゃりと歪んだことに気づいて、さらに身体を丸めて息を押し殺した。

やはりしばらく休みを貰って正解だった。
家に帰れないと口実を付けて正解だった。
とてもまともに振る舞えそうにない。

感情の波が去ったら、GTにでも行こうかと。
気怠く身じろぎながら、ぼんやり思う。



「思い上がるな。忌み嫌われるだけの分際で。」


幾度となく言われた言葉が、今回はより抉るように脳内で繰り返し再生される。
どうして忌み嫌われるのか。
どれが悪い、何がいけない?


髪の色が?瞳の色が?声が?仕草が?態度が?



「全てだ」



―――全部かよ。



「無駄な期待などするな。虫唾が走る」


期待。誰かに期待してたっけ。
男の言葉以外の声が混じる。
自分の声、が、諦めたように、嘲るように囁いた。


『手を伸ばしても振り払われるだけだったろ』



―――誰にのばしても?



『誰にのばしても』



―――そーかよ。・・・やっぱ、そっか。
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2008⁄03⁄07 20:34 カテゴリー:SS
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プロフィール

雪白ハクヤ

Author:雪白ハクヤ
性別:男
職業:クルースニク×魔剣士
誕生日:11月8日


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