株式会社トミーウォーカーが運営するネットゲーム「SilverRain」のPC雪白ハクヤの日記帳。
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 【7】フリージア


―――忍は甘いモンも好きだけど花も好きだよな。

―――え?ほら、綺麗だしそれに、花言葉って素敵だと思わないか?




一度家に帰った後、ハクヤは忍に話しかけるタイミングを伺っていた。
カフェを休むと蜜琉に既に伝えたが、忍には加えてしばらく家へ帰れない旨を伝えなければならない。
どうしようか、と忍の背中を見つめながら考えあぐねていると、おもむろに忍が振り向いた。


「・・・ハクヤ?」



「・・・お、おうどした?」


自分から話しかけようとした矢先だったため、咄嗟に反応できなくて返事が遅れてしまう。


「何か言いたいことがある?」


忍はおずおずとハクヤに尋ねてきた。


「・・・え、何でだよ?」


忍の方から切り出されるとは思わなかったため、ハクヤは虚をつかれたように目を瞬かせる。


「俺の背中じーってみてなかった?」

「・・・、忍後ろに目がついてんの!」

「えええぇ!?ついてないついてない!えっと、視線を感じたから何か言いたいのかなって」


確かに物言いたげに背中を見つめてはいたが、ごく自然に尋ねてくれる忍にハクヤは目元を緩めた。
忍はハクヤが何かしたそうにしていると、昔からさり気なく働きかけてくれた。
今この瞬間もそうだ。
学園に来るまで意思表示が苦手だったハクヤにとって、それは何よりも助かることで、それは今も変わらない。
先ほどまであれほど切り出そうとしては出来なかったのが嘘のように、すんなりとハクヤは話を切り出せた。


「あー、でも、まあ、ちょっと言うことはあんだけど」

「うん」

「・・・、その、別のバイトすることになったんだぜ!」

「別のバイト?」

「そーそー!!短期で!!色々掛け持ちするんだぜ。んで、鬼依頼が今教室で騒がれてるじゃん?俺も行くことになって」

「・・・そっか。えっ、鬼依頼に行くのか!?」

「おう、報告書読んだんだけど、すげーむかつくことやりやがるよなー!!ブッ倒してやるぜ!!・・・あ、そんでさ、2週間、ぐらい帰ってこねーかも」


悪ぃ。と一言付け加えると忍は静かに首を振って花のように優しく微笑む。


「鬼がいる都市に向かうんだっけ?遠出になるからしょうがないと思う。でも支度はちゃんとしないとダメだぞ?」

「・・・、ん、ちゃんとするって!!」


外泊するなら手持ちには余裕を持ってな、やら、あったかい服だしとくから、などと心から気遣ってくれる忍にちくりと良心が痛んだが、誤魔化すように笑い返した。


「・・・ハクヤ」

「・・・ん?」


すると、忍は少しだけ眉を下げ、そっと両手をこちらへ伸ばしてきた。
今の笑い方はおかしかったろうかとハクヤが身構えるよりも早く、さらり真っ白な髪を撫で始めた。
細い指先が髪の間をすり抜けていく。


「・・・、へへ、急になんだよー」


忍に撫でられるのはいつものことだったので蜜琉の時よりは落ち着いて反応できた。
くすぐったそうに眉を寄せて笑う。
さらに、まあ俺としては嬉しいけど!と付け加えると、忍は頬を紅潮させた。
が、手を離したりはせずハクヤをそっと見つめてくる。
いつもと同じ、はずなのに何か落ち着かない。


「な、なぁ、しの」


落ち着かないまま、無意識に名前を口にしようとした矢先、
こつん、と額がぶつかる音がした。
忍の顔が近い。
ハクヤは口を開けたまま硬直してしまい何も言えなくなる。


「ほら、えっとおまじない!」


そういえば、学園に来る前は怖い夢とか見たらこうやってたなって思って、と忍は笑う。
同い年だが、何処か幼さの残る忍は、人の変化に敏感で暖かくて、あどけない。
そう言えば小さい頃は今よりも不安定で、忍の後をついて回ってばかりだったのを思い出して内心複雑な気分になった。
きっと幼い頃みたいにハクヤをあやしている感覚なのだろう。
ハクヤには分からないが、一般的に母親が子供に対するような接し方、といえばいいのだろうか。
言ったら忍は複雑な顔をするかもしれないが、そんな接し方。
子供扱いすんなよ、といいつつ、ハクヤもいつもあやされているような感覚で撫でられたり、手を繋いでいた。



―――手を伸ばして、捕まえて、一方的に甘えて。ああ、何て勝手な。



だが、今日は何故かハクヤの方が顔が熱くなって。
自分でもよく分からない感覚が沸き起こり自らに対して怪訝な気持ちで眉を寄せる。

・・・いつも自分の方から忍にくっついたりしているのが、今日は忍の方からだった。

それだけのはずなのに、今、忍に対していつもとは違う感覚に苛まれている気がする。
そういえば、忍に嘘をついたのも今回が初めてかもしれない、とぼんやり思った。
いつもなにかあれば、 自分がどれだけ忍に依存しているのかを改めて突きつけられるほど単純にハクヤはすぐに忍に言ってしまっていたので。
だがいつからか何度も何度も弱音を零してばかりで、負担になってないかと不安を感じるようになった。

大事で、重荷になりたくなくて。 何よりも、嫌われたくない。
それは周りに誰もいなかった幼いときからに初めて出来た、そして今までずっと一緒だった大事な「幼なじみ」に対する感情なのだろうと、誤魔化す。



これは、今湧き起こったこの感覚は、分かってはいけない気がした。



「ちょ、忍、これじゃ俺がちびっこみてーじゃん!っつかいつの話だよ!!」


だから、今までならただ普通に喜んでじっとしていただろう状況から、冗談交じりで抗議して逃げ出す。



―――好意を向けられるのが、こんなに嬉しいのに、こんなに怖い。

―――返し方を、間違えてしまいそうで。

―――間違えたら、嫌われてしまいそうで。



「そ、そうかな。俺、先輩とかも頭撫でさせて貰ったりするけどっ」

「・・・それも何かダメ」

「えー!?」

「ほ、ほら、もうそろそろGT行こうぜ!!」


渦巻く感情を押し隠し、オロオロする忍を促しながら良将と待ち合わせたノーザンシティ米沢へ向かった。
待ち合わせ場所にむかっていれば、オレンジ色の作業服が視界に映る。
既に到着していた良将がこちらにむかって手を振っていた。


「お、ゆっきー、神風、こっちこっち!」


手を振る良将に駆け寄れば隣に見知った顔の人物が経っていて。
先ほどカフェで休みをもらうために声をかけた、そう、良将と待ち合わせたところにいたのは蜜琉だった。
カフェでのやりとりの直後だったので、ハクヤはどういう顔をすればいいのか分からず出かけた言葉を飲み込んだ。
ハクヤの横で忍が穏やかに顔を綻ばせる。


「わ、もう一人って蜜琉先輩だったんだ」

「店長も誘ったら来てくれるって言うからさ!今日は四人でまわろー!」

「ふふ、あたしここは来るの初めてだわー!それでね、良将ちゃんが誘ってくれたからどうせなら行こうかしらって。忍ちゃんも、・・・ハクヤちゃんもがんばりましょうねぇ?」

「・・・、おう!っつーか代わりばえしねー面子だよなー」


どぎまぎしていたハクヤに気づいたのか、蜜琉はいつもと変わらない調子で笑いかけてきた。
ようやくほっとしたようにハクヤも遅れて笑い返し、それじゃあ行くかと誰とも無しに歩き出す。
肝心の新たに発見されたGTはと言うと、熊に似た妖獣と戦った区域に負けず劣らず敷地が広い。
道を間違えて来た道を戻る羽目になったり、地面に置いてあった箱を開けてゴーストに囲まれたりと、いつにも増して骨身に染みた。
最深部に埋められていた外道上人を倒した頃には体力も気力も残り少なく息切れ寸前になっていたほどだ。


「くッ…はーーーー!!しんどかったァあのミイラ!」


ようやく辺りが片付いて、良将が背筋をぐーっと伸ばす。
良将の一声を皮切りに、同行していた三人もそれぞれ力を抜いた。


「っつーか全体回復とか変な光線とか、すげーめんどくせぇな!」

「あの光線はつらいなー、一番苦手かも」

「あたし術式苦手なのよねぇ。囲まれちゃったし、危なかったわー」

「もう、ホントだよ!店長前に出すぎ!」

「だって、近くまで行かないと装甲かけられないじゃないのよぅー」

「はいはい、そこいちゃつくんなら帰ってからにしろよ!」

「ふふ、二人とも仲良しだなーっ」


良将と蜜琉を茶化しながら、忍と笑いながら出口へ向かう。

いつもと変わらない軽やかなやりとり。
いつもと変わらない暖かい空気。

実家にいた頃は想像も付かなかった環境はとても居心地がよくハクヤの表情は自然と和らぐ。
だがそれに比例するように、後日に控えているあの男との接触が、より重さを増してずしりとのしかかってくる気がした。



―――ちょっとぐらい忘れとけよ俺。



対象がいない苛立ちは、行き場を無くして自分へと返ってくる。
片手で項を押さえて、一瞬だけ視線を遠くへ投げ、それからすぐに戻した。
ふと何気なく振り向くと、良将がこちらを見ていた。


「・・・、何だよ?」


考えるよりも先に、表情がパッと笑みに切り替わる。
畳み掛けるように、誤魔化すように、俺じゃなくて玖凪をみとけよ、などと、続けて茶化そうとしたのだが。
近寄ってきた良将は無言で、


「―――ってぇ!!?」


ゴツンッと確実に音がしそうな頭突きを敢行してきた。
笑みを浮かべるのに必死だったのと、やや目線の上からの頭突きはそこそこ威力があって、ハクヤはたまらず額を抑えてよろめいた。


「てめっ、何しやが・・・」


よりによって頭突きかよ!と良将を睨み付けて抗議しようとした矢先、がしっと肩を組まれ、抗議するのも忘れて、目を見張る。


「別に!よっしゃ帰ろー、ほら神風と店長とメシ食いいこーぜ!」


良将は、おもいっきし暴れたら小腹が空いたしねェ!と続けながらハクヤをずるずるひっぱっていく。


「・・・ちょ、ひっぱんじゃねー!!こっの、人の話を、聞け、よ!!」


ハクヤはしばらく呆然と引きずられていたが、はっと取り繕うようにじたじたと暴れて良将の手から逃れて、忍の方へと避難した。
そしてそのまま忍すら追い越してよりやや前を歩き出す。
先頭を切って歩きたがるのはいつものことだが、今日はあまり顔を見られたくなかった。

そういえば、ご飯を食べて返ろうか・・・と今良将は言った。
いつもなら喜んで食べに行くのだが、今日はいかんせん調子が良くない。
どうしようか。断ろうか。なんと言って?
ともかくこのまま歩けば自然と食べて帰る流れになりそうだったので、行くか行かないかをはっきりさせようと後ろを振り返れば、ぱちっと忍と目があった。
忍は何か言いたげに口を開いてすぐに閉じ、また再び言葉を連ねた。


「えっと、ハクヤ、明日依頼出発じゃないのか?寝坊したら俺が起こすけど、どうする?早めに帰って寝る?」

「・・・、あ、そうだよ俺明日鬼ブッ倒しに行くんだった!出発すんの朝だし、わりぃけど先に帰るぜ」

「そっか、それじゃあ、俺も帰ろうかな?」

「・・・、忍は食って帰っても良いんだぜ?あ、でもあぶねーか!」



断りを入れる申し訳なさと、そんなに帰りたそうにしていたろうかと思って、ハクヤは苦笑いを浮かべる。
今度食いに行こうぜ?と緩やかに笑い、良将達から離れながら忍の手をそっとひく。
いつもよりもぎこちなくなってしまったような気がして自分が嫌になった。

依頼に集中しなければ、ともやもやしてる胸内を落ち着かせようとした。
今回の依頼で対峙する相手は、強敵だ。中途半端な気持ちで行くべきではない。
けれど、依頼が終えた後にあの男に会うのだと思うと、どうしても気が滅入ってしまった。

もう少し。きっと喉元を過ぎれば何でもないこと。
行きたくない、早く行って終わらせたいという相反する感情の中、無駄とも言えるほど自分の顔に笑みを貼り付けた。











殴って潰してまた殴って。

つぶし終わって緩やかに笑い、そして小さな嘘をつく。
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2008⁄03⁄01 00:50 カテゴリー:雑記
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プロフィール

雪白ハクヤ

Author:雪白ハクヤ
性別:男
職業:クルースニク×魔剣士
誕生日:11月8日


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