FC2ブログ
 株式会社トミーウォーカーが運営するネットゲーム「SilverRain」のPC雪白ハクヤの日記帳。
 スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。






--⁄--⁄-- --:-- カテゴリー:スポンサー広告
▲pagetop








 【5】漂う恐怖


緩やかに迫る悪意の足跡
携帯の鳴る音が、耳にこびりついて離れない




「ワリィな、付き合って貰っちゃって!」


ハクヤは愛用しているケルベロスを肩に担ぐと、やや強引に同行させた相手に話しかける。


「全く、バレンタインの夜に横須賀まで連れまわされるなんて思いませんでしたよ」




右腕のアームブレードの刀身を振って付着した液体を飛ばし悪態を返してきたのは、その同行者である影郎だ。
だが、ハクヤは影郎の悪態を気にも留めず、にやにやと悪戯な笑みを浮かべていつもと違うマフラーに視線を向けた。


「そう言うなよ、アザレアまで付き合ってやったんだし。それに……似合ってるぜマフラー☆」

「だああああ!――ほっといてくださいな!」


甘い匂いと甘いムード漂う学園をあちこち覗いていたら、たまたま見かけた一場面。
それが知り合いともなればからかうしかねーじゃん!とGTに誘ったのだ。
影郎から思った通りの反応が返ってきて思わずハクヤは満足そうに笑う。


「またまたぁ、照れちゃってよー!」

「……今度アミーゴ行きません?壁に挟めますから」


あまり突きすぎると本当に挟まれかねないので、からかうのをやめてふと話題を変えてみた。


「ぬあ、それ勘弁!……ところでもう俺帰るんだけど、お前かえんねーの?」

「え、あ…・・ええ、ちょっと用事ありましてね。もうちょっと居ますよ」


腕時計を見ればもうすぐ終電だ。
だからごく自然な話題転換のつもりだったのだが、影郎は何故か一瞬詰まり、言葉を濁した。
曖昧な返事にハクヤは首を傾げつつも、なんとなく掘り下げる空気ではない気がして。


「? また明日なー、カフェに肉バケツ食いに来いよ!」


いつもと同じ反応を影郎に返すことにした。
周りの薄暗さのせいでよく分からないが、心なしか安堵したようにも見える。


「はーい、それじゃまた明日ですね……ゆっきー♪」
「ゆっきー♪じゃねー!!」
「はいはい、まあ明日にはまたカフェに顔出すと思いますから……それじゃ」
「ヤロウ、流すんじゃねーよ!!ん?おう、んじゃ、また明日なー」


影郎にまで不本意に浸透してしまったあだ名で呼ばれ、反射的に噛み付く。
最近ではうっかり返事をしてしまうので、タチが悪い。
別れる間際まで影郎の様子が少し気になったが、気のせいだろうと自分に言い聞かせた。
自分も少し本調子ではなく、上手く立ち回れる自信がなかったのもある。
ヒラヒラと手を振り影郎と別れると、終電の電車へと急ぎ足で乗り込んだ。
駅から電車が発車すると、扉の傍に寄りかかって流れていく景色を眺める。




----電話、どう、すっかな・・・



ここ最近一人になると考え事をすることが多い、と電車に揺られながらハクヤは思う。
しかも悪い方向に、だ。
夢とあの携帯の着信のせいだと分かっていたし、自分から連絡をすべきかと迷ったりもしたのだが、ハクヤにはどうしても自分からあの男に電話をかけると言うことが出来ないでいた。
言ってしまえば怖い。声を聞くだけでも気分が沈む。
悪意だけしか向けられないと分かっているのに自ら望んで行動を起こす嗜好は持っていないし、どんなに悪態をついても、どんなに嫌悪しても、幼い頃に植え付けられた恐怖は拭えないのだ。

学園に着てからは、十人十色では収まりきれないほど個性豊かな容姿の学生に遭遇してきたのでその意識も薄らいだが、学園に来る前ハクヤは自分の容姿が大嫌いだった。
日本人離れした翠の瞳。
どんな暗がりでも月明かりに照らされれば浮き彫りになる真っ白な髪。
実父、実母どちらの要素も受け継がれなかった、生まれたときから異質だった容姿。
母親は物心付く前にこの世を去ってしまったためどんな思いで自分を見ていたのか分からないが、周りの反応は畏怖や奇異の類ばかりだったのを思い起こす。


だから、母親は肩身が狭かったのではないかと思う。

産まなければ良かったと泣いていたのかもしれない。



ハクヤの家族の記憶は、自分を嘲り、蔑み、世間体のためだけに生かしている父親だけ。
一度でも良いから頭を撫でて欲しいと思っていた時期もあった。
けれど、そんな期待はとうの昔に捨て去った。
どんな振る舞いをしてもあの男は忌々しげにしかハクヤを見ていない。
期待するだけ無駄なのだ。


「・・・早くつかねーかな」


一人でいると際限なく悪い方向に思考が沈んでいきそうだ。
忍のいる家へとっとと帰りたいなとぼんやり考えていると。




TRRRRRRRRRRRRRRRRR...............



自分のジャケットから着信音が鳴り響いてギョッと目を見開く。
マナーモードにするのを忘れていた。
慌てて取り出し切ろうと携帯を開いて、さらに目を見張った。


あの男だ。


また電話にでなければ、いずれ何倍もの嫌味と嘲りで返されるのが身に染みていた。
目的の駅にまだついていなかったが、仕方なく今停車した所で降り、忙しなく鳴り響く携帯の通話ボタンを押す。
・・・指が震えてるのは、きっと寒いからだ。今日はとても冷えるので。


「・・・、・・もしもし」

「何をやっていた」


出た途端これだ。先が思いやられる。
それでも、なるべく気に障らないよう静かに答えた。


「・・・ゴーストタウンで自己鍛錬を」


他人行儀な返答で。
似合わない固い物言いに、学園で知り合った相手だったら首を傾げそうだと頭の隅で思う。
実家ではいつもこんな口調だが。
きっかけは何だったろう。今はもう思い出せないけれど。


「はっ・・・、自主的に取り組んだところでたかがしれているだろう」

「・・・」


見下しているであろう目線で、押しつぶすかのようにあの男は言い放ってくる。
悪意を押し隠そうともしない物言いにハクヤはげんなりした。


ああ、五月蠅い。五月蠅い五月蠅い。


だが、流石に悪意をぶつけてくるためだけに電話をよこすほどあの男も暇ではない。
この男から連絡があるのは大抵用件があるとハクヤは知っていたので無言で先を待つ。
そうすれば、何の滞りもなく話が進む。
我慢、すればいい。


「最近状況の報告を怠っているようだな。後日私の元へ来い」


こっちの都合お構いなしにかよ。


思わず悪態をつきそうになるのをグッと堪えた。
ハクヤの反応が気に食わなかったのかもう一度あの男が確認してくる。


「聞いているのか」

「・・・・・聞いてる、どこに」

「---区、---番地、---ホテル、814号室だ」

「・・・いつ」

「---日、20;00だ。・・・来なければ分かっているな」

「・・・わかった」


何となく予測は出来た。
最近の学園の現状と、忍、ついでで自分の状況を聞いた後、気に食わないことが少しでもあればこの男は鬱憤を晴らすつもりだ。

・・・自分で。

それでも行かないという選択肢はハクヤにはなかった、選べなかったので、ただ、無感情に応じた。

その後事務的な応答を幾度か繰り返して。
向こうが電話を切ったのを確認すると、人通りの少ない駅のホームにずるずると座り込む。
刺すような肌寒い空気の中、長く細く息を吐いた。

行きたくない行きたくない行きたくない。
けれど、行かなければならない。

何度かこんなことがあったので、自分がどういう状態になるのかも予測できた。
これ以上負担になりたくないと思っている矢先に何てタイミングの悪い。

きっと、学園に行ってもまともに表情を作れない。
忍と一緒にいても、もしかしたらほとんど表情が動かなくなるかもしれない。

空気を悪い方向に持って行きたくない。
普段通りの振る舞いが出来ずにしばらく引きずるのは目に見えていた。
慣れてしまえば楽なのだろうが、一度暖かい場所を知ると、皮肉にもあの男との対話がより辛辣なものに感じてしまう。

学園内の自分の身の回りの人間はとても暖かい。


「--日っつったっけ。カフェ、ちょっと休みもらわねーと・・・」


そう言えばさっきの電車が終電だった。
自宅まで少しあるが歩いて帰れない距離ではない。
ゆるゆると立ち上がりながらハクヤは緩慢に歩き出した。
無理にでも気持ちに整理を付けて、明日まではまともな顔が出来るようになろうと思いながら、カフェを休む口実を考えて。







結局、完全に決裂してあの場所から逃げ出せるほど、自分は強くないのだと思い知る。

やっぱり、自分が、一番・・・めんどくさい。
スポンサーサイト







2008⁄02⁄18 00:06 カテゴリー:SS
▲pagetop










| HOME |

プロフィール

雪白ハクヤ

Author:雪白ハクヤ
性別:男
職業:クルースニク×魔剣士
誕生日:11月8日


最近の記事


最近のコメント


最近のトラックバック


カテゴリー


月別アーカイブ


ブログ内検索


RSSフィード


リンク


FC2カウンター


▲pagetop


Copyright © 2018 自由ノート. All Rights Reserved.
template by nekonomimige material by blannoin
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。